こんにちは。きむ公です。
今回は米国を代表するオイルメジャー、エクソンモービルの銘柄分析です。
配当利回りがかなり高い(執筆時点で8.16%!)こともあり高配当投資家に人気の銘柄ですが、残念ながら2020年のパフォーマンスは非常に悪いです。
この記事は2020年7月11日に執筆していますが、この時点で年初来リターンは-42%です。
最近は低調なエクソンモービルですが、さすがにこれだけ下がると逆張りもしたくなるというものです。
早速詳しく見ていきましょう。
(以下データソースは特に表記がない限りマクロトレンドです。)
目次
エクソンモービルの株価推移と配当利回り
これがエクソンモービルの5年チャートです。決して今までも上向いてはいませんでしたが、2020年に入ってからの下げが半端ではないです。
これは3月に原油先物が一時20ドルを切るほどに暴落したことに由来しています。
株価暴落の結果、もともと高かった配当利回りは何と7.8%にまで上昇しました。
高配当投資が好きな人は多いですがここまで高いともはや不気味さ以外感じないのではないでしょうか。
ちなみに類似企業のオキシデンタル・ペトロリアム(OXY)は 先日配当を1/7以下にカットしました。
エクソンモービルの売上高と営業利益
下のグラフがエクソンモービルの売上高と営業利益の推移です。ここ数年は利益が非常に低い水準にとどまっていました。
長期化してしまった原油価格の低迷が着実にエクソンの経営にダメージを与えていたことがわかります。
エクソンモービルの EPS 推移
当然エクソンモービルの EPS も安定していません。明確な方向感が今ひとつ感じられませんね。
今後も原油価格の上下に従って、 EPS がぶれ続けていくことが想像されます。
事業の最大のファクターである原油価格を自分で決定できないというのは非常に痛いですね。
エクソンモービルの BPS推移
決して安定していないとはいえ一応利益を出してきました。それを反映するかのように、長期的に見た時に BPS( 一株当り株主)は上昇してきました。
これには数年前まで割と盛んにエクソンモービルから自社株買いを行っていたことも大きく関係しています。
エクソンといえば配当が印象的ですが、自社株買いも盛んに行う企業だったのです(今もそうだとは言っていない)。
エクソンモービルの ROE
ROE は危機的な状況に陥っています。波打ちながらも長期的に下降傾向にあることが見て取れます。
なかなかまずい状態だと言えるでしょう。
エクソンモービル株の長所
割安感
これまで散々株主を泣かせてきたXOMですが、だからこそ割安と考えることができるかもしれません。この記事執筆時点で、エクソン株価は52週高値の半分程度です。
相場格言に「半値八掛け二割引」という言葉があります。
時には株価が三割ぐらいになってしまうこともあるよ、という意味です。
(0.5×0.8×(1-0.2) = 0.32)
数年前の株価を考えると、エクソンは既にこのくらいの水準にいるわけです。
さすがにもう底であってほしいですね(あくまで願望ですが笑)。
配当利回りの高さ
そしてエクソン株の最大の魅力は、何と言っても配当です。この記事執筆時点で配当利回り9%超えという異常な水準にまで達しているわけですが、他のエネルギー銘柄に比べると財務基盤が強固で規模も大きいXOMは減配リスクはまだマシな方です(減配リスク0では全くありません)。
時に借金までして、配当を維持するところを見ると、配当による株主還元へのこだわりは並々ならぬものがあると言えそうです。
加えて、ここまで自社株買いも結構してくれていました。
エクソンモービル株のリスク
長期的な原油価格低迷
目先、コロナ流行によって原油需要が低迷しています。産油国が減産に向けて色々とやっていますが、努力の割に原油の上値が重いのは根本的に原油需要がないからです。
人々が外出を制限され、経済活動全般が停止している今、誰がガソリンを必要とするでしょうか。
また、原油価格は長期的にも低迷しそうだと考えています。
アメリカに眠る莫大な原油が採掘可能になった21世紀以降、もう20世紀のようにエクソン・モービルが爆発的に成長する時代は来ないのかもしれないと個人的には考えます。
この点は後述します。
原油安〜株価低迷の原因と今後の展望〜
繰り返しになりますが、エクソンモービルの株価がここまで低迷しているのは何と言っても原油価格が暴落してることが原因です。
近年原油価格は非常に安い水準で推移していました。
ただでさえ安いのに、コロナショックによる需要の低迷とサウジアラビアとロシアの交渉決裂によって協調減産が破断になったことも非常に大きいです。
なお、原油安になった経緯が知りたい方はこちらの記事を参照してください。
(4/13追記)
OPEC+の合意により、原油日量970万バレルの減産が決まりました。
足元の需給の崩れは多少は改善されるでしょう。
OPEC+の合意により、原油日量970万バレルの減産が決まりました。
足元の需給の崩れは多少は改善されるでしょう。
元はといえば、技術進展によって米国の国土に眠る岩盤層からシェールオイルを採掘することができるようになったことで一挙に世界の産油国のパワーバランスが崩壊しました。
世界的に原油は供給過多の時代へ突入したのです。
サウジアラビア率いる OPEC は、原油価格のコントロール能力をますます失いました。
しかしアメリカが原油の採掘技術を進展させたことで、同じアメリカのエクソンモービルが業績不振に苦しむとは何とも皮肉なものですね。
かのジェレミーシーゲル先生の名著『株式投資の未来』では、こういう主張がありました。
技術革新の恩恵を必ずしも株主が受けられるとは限らない。
ハイテク企業よりもエクソンモービルのようなオールドセクターの企業が高いリターンをあげることもある。
しかし今や、そのエクソンモービルがシェール革命と言う技術発達によって苦境に立たされています。 ハイテク企業よりもエクソンモービルのようなオールドセクターの企業が高いリターンをあげることもある。
さて、短中期的にはサウジアラビアのめちゃくちゃな石油増産が調整されるかどうかでエクソンモービルの価格も大きく変動してきそうです。
これには、サウジアラビア・ロシア・アメリカの三国の政治的な思惑が複雑に絡み合ってきます。
ただひとつ言えるのは、ここまでの原油安は三国全てにとってマイナスであるということです。
サウジとロシアはエネルギー資源で経済が持ってるようなものです。
アメリカにしてもジャンク債を発行しまくっているシェール企業がバタバタと倒産するのはまずいはずです。
遠からずこの三つの国が原油価格調整をめぐって話し合いの場を持つことは十分に考えられることです。
うまく調整がされれば、そのぶんエクソンモービルの株価も反発すると思われます。
なので中期的な保有計画も無くはないのかなと思います。
一方で、年々シェールオイルの採掘コストが下がっていることや、ESG投資がますます盛んになっていることから個人的には長期的に保有したい銘柄ではありません。
(とはいえ僕もインデックスファンドを通じて間接的に投資してしまっているんですが笑)
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