今回はあのウォーレンバフェットも投資したデルタ・エアライン(DAL)の銘柄分析です。
デルタ・エアラインに限らず航空銘柄はコロナショックで凄まじく株価が下落しました。
飛行機が飛ばず、売上9割減が当たり前の状況でしたから、これは当然です。
一方、バフェットはこれまでこのような暴落局面で優良銘柄を破格の安値で取得することを得意としてきました。
そのバフェットがこの株を購入したことから、同社には大きな注目が集まっていました。
ちなみに、この記事執筆時点(7/11)でデルタエアラインは、バフェットが最近投資した価格(44.6ドル)の6割程度というとんでもない安値になっています。
はじめに、 デルタ・エアライン社のポイントを整理しておきましょう。
POINT
・最新機材の購入よりもコスパのいい中古機を好んで使用する・近年の原油安で中古機の燃費の悪さという弱点がカバーされている
・コロナショックによる影響で、直近はかなりの業績悪化が懸念される
目次
Delta Airline の株価推移と配当利回り
Delta Airline の株価は2012年頃から急激に上昇していましたが、コロナショックで急速な下げを見せています。航空株はコロナの影響をもろに受ける株です。
世界中で人の移動が制限され、ついにはヨーロッパからアメリカへの渡航規制も発表されました。
世界の航空会社が加盟する航空連合(ワンワールド、スカイチーム、スターアライアンス)は、新型コロナの大流行で、航空会社が非常に厳しい状況にあるとして、各国政府と株主に対して支援を求める声明を共同で出す事態になっています。
このような事態の中で直近高値で60ドルを超えていたデルタエアラインの株価も27.1ドルに留まっています。
なお、配当は停止されています(2020/7/11)。
もっとも、今後数年の間に果たして配当を復活できるかどうかは不透明なので注意してください。
売上と営業利益
これまでのデルタ・エアラインの売上と営業利益は下のグラフのように推移してきました。ここまで売上の伸びは安定的でした。
また近年の原油安の流れを受けて利益率も改善してきていますね。
原油安がますます加速していることは追い風です。
コロナによってこの業績がどこまで悪化するかが今後の着眼点になります。
EPS
原油安によるコストの削減や売上の増加に伴って EPS も近年では増加してきていました。しかしリーマン・ショック前後にも大幅な赤字を計上しているように、景気変動に耐性はあまりないと言えそうです。
コロナショックを契機に世界的な景気後退に入るとすればデルタエアラインも相当苦しい戦いを強いられる可能性があります。
もっともこれはデルタエアラインがというよりは航空業界全体がという風に言った方が正しいでしょう。
むしろ後述するように、デルタエアラインは航空業界の中では中古機にコミットしたスリムな経営を行っている会社なので影響はまだ少ない方と予想できるかもしれません。
BPSとROEの推移
デルタエアラインの BPS と ROE の推移を下に図示しておきます。近年では BPS(一株当り株主資産) が安定して増加していたことがわかります。
一方 ROE の方も、(この図ではスケールの関係上わかりにくいですが)近年は30%程度をマークしていました。
経営効率はかなりいい方だと言えます。
(高いROEには自社株買いを行ってきたという事情もあります。)
バフェットは ROE が高い企業を好む傾向にありますが、デルタエアラインもその例に漏れないようですね。
発行済株式数の推移
Delta Airline は近年、自社株買いに積極的でした。次が発行済株式数の推移です。
コロナで経営に大きなダメージが生じたことが予想されるので、今後しばらく自社株買いをする余力があるかどうかはかなり疑問です。
むしろリーマンショック前後に、 増資を行なって発行済株式数が増えていることが気になります。
今後も増資で資金調達する可能性は低くないかもしれません。
デルタエアラインの経営の特徴
航空会社は新しい飛行機が好きです。万が一航空事故が起これば信頼は一気に失墜しその後の経営に破滅的なダメージが生じます。
それに加えて燃費が良い最新の飛行機を使用したほうが長期的にはコストパフォーマンスが優れると考えるからです。
デルタエアラインの発想は、この逆をいくものです。
かつてエアバスA350 や ボンバルディア CS 300といった新鋭機を発注する一方で、 MD-90やボーイング717など生産中止になった中古機を安く買い集めました。
MD-90は日本航空からも購入しています。
2013年の少し古いデータですが、Delta Airline の平均機齢は15.8年で、エミレーツ航空の5.6年やシンガポール航空7.5年の倍以上で、ユナイテッド航空の13.7年やアラスカ航空の10.6年よりも古いです。
ここ最近は原油が非常に安くなっていますから、多少燃費が悪い中古機でもランニングコストは低下しています。
このことはデルタにとっては追い風でしょう。
そして中古機を使用することで浮いたお金を借金返済や顧客サービスの充実に回すというのがデルタ航空の考え方です。
最新鋭の飛行機を揃えることよりも、例えばハブ空港の改修や機内 wi-fi の整備といった部分の方が顧客体験にとっては重要だととらえているようです。
もちろんこれらは、中古機でも安全に飛ばせるデルタの整備技術があってこその施策であることはいうまではありません。
このように非常にコスト管理意識の高い企業ですので、何か航空銘柄から一つ選ぶなら僕はこのデルタエアラインを選びます。
(というよりバフェットに便乗して少しだけ購入していました笑)
今後も Delta Airline 株に関しては注目していきたいです。
(航空銘柄にまとめて投資できるETF、JETSについても解説しています↓)
JETSは米国の航空株にまとめて投資できるETF! でも日本の証券会社では買えない?
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