株式投資をやっていく上で恐ろしいのが金利の上昇です。
コロナショック以降、驚異的な金融緩和のおかげで株価が暴騰したのは記憶に新しいですよね。
(しかも、コロナのせいで実体経済がズタボロなのにも関わらず)
当面は FRB も利上げなど全く考えていないといいます。
が、それでも超長期的に見れば、いつかは金融環境も正常化していくことでしょう。
今の株価が高水準であるだけに、金利が上昇した時に株式相場が暴落するのではないかと凄く不安です。
そこで、なんとかして将来的な金利上昇リスクをヘッジしたいなと考えています。
まず思いつくのはポートフォリオの中の金融セクターの比率を増やすというアイデアです。
元々金融セクターというのは 高金利で恩恵を受けますからね。
JPMなどの金融株を多めに持っておけば金利上昇時にむしろキャピタルゲインが得られるような気もします。
しかし結論から言うと、単純に金融株を購入したからといって金利リスクをヘッジできるとは考えない方がいいです。
今回はその理由について書いていきます。
目次
金利と株価の関係
まず最初に金利と株価の関係を簡単に復習しておきましょう。(ここで言う金利とは国債の利回りのことです。特に米国10年債を想定しています)
一般的に金利が上がると株価が下がることが多いと言われます。
例えば米国債の利回りがずっと10%だった場合、
米国債を買って満期まで保有しておけばノーリスクで毎年資産を10%増やせる
という状況です。
こんな美味しい話があれば、投資家はリスクの大きい株式なんて持たずにさっさと国債を買ってしまいますよね。
また、各種金利は連動しているので、この状況では株の代わりに銀行預金やリスク低めの債権(公債など)を買っておいても、効率的な資産増加が期待できます。
雑な説明ですが、このような事情で金利と株価は逆相関することが多いです。
金利と株価の関係についてもっと詳しく知りたい人はこちらの説明を参考にするとよいでしょう(外部リンク)。
https://minkabu.jp/beginner/lesson/23.html
金融セクター株は金利上昇に強い
金融セクターの株式と金利の関係についても少し見ておきましょう。先ほど金利が上がれば株価が下がると言いましたが、その影響は業種によって様々です。
株式の中でも金融関連の企業の株であれば、むしろ金利上昇の恩恵を受けると言われています。
銀行がお金を貸す時の金利は国債金利に連動しているので、必然的に彼らの金貸し業は潤うわけですからね。
(逆に、事業に多額の融資を必要としている業種などは資金調達コストが上がってしまうので業績が悪化するかもしれません。)
その辺の話は込み入っているのですが、とりあえずここでは、金融は金利上昇に強い側面があるということだけを押さえておけばOKです。
金融株で金利上昇リスクをヘッジできるか
今回の最大の関心は、金融株をたくさん買っておけば将来的な金利上昇に備えることができるのかということです。例えば僕のように米国株のハイテク銘柄を好む投資家は、
将来的な金利正常化でポートフォリオのテック株が下落するかも……
そこでお守りとして
金融セクターを多くしておくのはどうかな〜
今回は過去データから、金融セクターがどれくらい金利上昇に強いのかを検証してみましょう。
【結論】金融銘柄を買ったからと行って金利上昇ヘッジは難しい
まず結論から述べておきます。残念ながら単純に金融銘柄を買っただけで金利上昇のヘッジとすることは難しいです。
株価と長期金利(米国10年債)のデータを比較
今回、・長期金利(アメリカ10年債)
・S&P500(米国の代表的な株価指数)
・VFH(ヴァンガードの金融セクター ETF)
の時系列推移を比較してみました。 ・S&P500(米国の代表的な株価指数)
・VFH(ヴァンガードの金融セクター ETF)
VFHが創設された2004年の始めからこの記事執筆時点(2021年1月下旬)までの3つのデータの推移は以下のようになります。
^GSPCはS&P500, ^TNHは10年債利回りを指します。
また、グラフは開始時点の値を1として相対化しています。
まず、これを見ると2011年頃からどんどん金利が下がっていき、それに伴って株価がどんどん上がっていたことが分かります。また、グラフは開始時点の値を1として相対化しています。
S&P500はGAFAなどのクソ強い株に先導されていたこともあり、金融セクターをかなりアウトパフォームしていますね。
さて、金利と株価の関係を考えるために、相関係数を見てみましょう。
結論から言うと、金融セクターは確かにS&P500全体よりは金利と負の相関が弱いのですが、それでも影響を免れているわけではありません。
この3指標の相関係数行列は以下のようになりました。 なお、S&P500とVFHの相関が鬼のように高いのは実際に株式投資をやっている人にとっては自然なことですよね。
やはり個別のセクターは、相場全体の状況に強烈に影響を受けます。
(というか、そもそもVFHの銘柄の多くはS&P500指数に組み込まれてますしね)
時系列データを分析する上で相関係数を使うことにはかなり問題があったりもするワケですが、まあ細けえことはいいでしょう。
ちなみに過去の株価データや金利データをそのまま使うのではなく、その日次リターン(変化率)の相関係数行列を作ってみると下のようになります。 今度は金利と株式が正の相関を示しています。つまりデータの加工の仕方によっては、そもそも金利が上がっている時に株も上がっている傾向があると考えることもできるというわけです。
そもそも、「金利と株価が逆相関する」というお題目はそれほど絶対的なものではないっぽいですね。
しかも、金融セクターかそうでないかは金利の変化(の変化)との相関にほとんど関連していません。
いずれの方法で考えてみても、
「金利が下がりそう⇒ヘッジ目的でとりあえず金融株買っとこ!」という考え方はあまり良くなさそうです。
そんなことをしても、普通に株を持っている状態とそこまで変わらない結果になりそうです。
金利の意味を考えることが重要
金利と株価の逆相関自体が結構曖昧だというのは発見でした。冷静に考えてみると、金利上昇という状況が意味することは様々ですよね。
例えば、不景気なのにFRBの意思に反して金利が上がってしまうような状況では当然実体経済への悪影響を懸念して株が売り込まれます。
こういう状況では、銀行も貸し倒れ引当金を積み増しする必要があり、決算は確実に悪化します。
そうするとやはり金融株も下落してしまうということでしょう。
逆に、景気が良くなって(=企業の業績が上がって)いる時にFRBが利上げを行うのであれば、金融に限らず株価下落は起きないかもしれません。
そもそも実体経済自体が強いですからね。
ということで「金利上昇=金融セクターに恩恵」と短絡的に考えず、その時の金利上昇が何を意味するのか考え続ける必要があると言う結論になりそうです。