SPYDは、高配当投資家にとにかく人気がある ETFです。
僕自身は高配当投資家ではありませんが、微妙に余った NISA 枠を埋めるために SPYD をほんの少しだけ買ったりもしています。
昨今ではコロナショックで暴落したことから、一部ではオワコンという声も聞こえてくる SPYD ですがいまだに根強い人気を誇っているのも事実です。
実際株ブログや YouTube などで SPYD をお勧めしている人をよく見かけると思います。
今回は SPYD が本当にオワコンなのかどうか検証したいと思います。
(記事のデータ元は運営のステート・ストリート社の公式サイトです。)
追記(2021年4月)
この記事はコロナショック直後に書いたものです。
コロナショックからしばらく経ち、SPYDは値を大きく戻しました。
バイデン政権の巨額の財政出動や長期金利上昇によるグロース銘柄からの資金流出などが背景にあります。
この状況を知った上で、当時書いた記事を眺めるのも面白いかも、と考えてほとんど手をいれずに残してあります。
この記事はコロナショック直後に書いたものです。
コロナショックからしばらく経ち、SPYDは値を大きく戻しました。
バイデン政権の巨額の財政出動や長期金利上昇によるグロース銘柄からの資金流出などが背景にあります。
この状況を知った上で、当時書いた記事を眺めるのも面白いかも、と考えてほとんど手をいれずに残してあります。
目次
SPYD とは
SPYD は正式名称を”SPDR Portfolio S&P 500 High Dividend ETF”といいます。2015年に設定されたばかりのかなり新しいETFで、純資産総額は17億ドル程度です(2020年5月現在)。
特徴は S & P 500の銘柄の内、配当利回りが高い株80社を機械的に均等に組み入れていることです。
SPYD の組入銘柄とセクター
まず、 SPYD の組み入れ銘柄を具体的に見ていきましょう。SPYD の組入比率が最も多いのはギリアドです。 その他アッヴィやベライゾン、フィリップモリスなど日本の高配当投資家に人気の個別株が多々組み入れられていることに気付きます。
次の表が組入比率上位10銘柄です。
SPYDは均等に80銘柄を組み入れる仕組みです。
組入比率に差が出るのは、組み入れ後に株価が上昇したからです。
特にギリアドは新型コロナ治療薬のレムデシビルへの期待で株価が大きく上昇しました。
セクター別で見ると、不動産や一般消費財 、金融といったセクターが多いです。 下の表が組み入れセクター TOP 10です。
不動産が多くなっているのは、REITが入っているからですね(あまり知られていませんが S & P 500にはREITも入っています)。
傾向としては、やはりエネルギー、ヘルスケア、金融など成熟産業かつ配当利回りがよさげなセクターが 多いですね。
SPYD の経費率
SPYD の経費率は0.07%です。これは全ての ETF の中で見ても相当優秀な部類に入ります。
これはほとんど文句のつけようがないです。
SPYD の株価推移と配当利回り
次に SPYD の株価推移を見てみましょう。下のグラフはここ5年間の SPYD のパフォーマンスです。 コロナショック直前までは高配当 ETF でありながら、株価も右肩上がりで上昇していくという状態でした。
大人気だったのも頷けます。
しかしその後コロナショックで株価は大きく下がりました。
上のチャートも完全にナイアガラ状態ですね。
その後、多少回復していますが、まだまだ戻りきるまでには長い道のりです。
配当利回りは2020年6月22日時点のデータで5.14%となっています。
配当利回りが高いのは良いですが、高すぎて不気味さを感じる水準に入ってきています……。
SPYD のパフォーマンス検証
コロナショックでは SPYD は一人負けの状態になったために、結構叩かれました。HDV、VYM といった他の人気の高配当 ETF と比べても、株価の下げはとりわけ大きいものでした。
下のグラフが、コロナショック前後の SPYD とVOO(SP500連動ETF) と HDV, VYM の株価推移を比較したものです(2020年1月1日の株価を1としています)。
まずここから言えるのは、高配当 ETF(SPYD,VYM,HDV) は通常のインデックスファンド(VOO)よりも大きく暴落していると言うことです。
さらに高配当 ETF の中でも SPYD の下げはとりわけきついですね。
配当利回りが高い株は業績不安な銘柄が多いことから暴落時には大きく売り込まれます。
そして昨今の高配当セクターは、 消費財や不動産など現実世界の経済活動に根ざしたものが多いです
故に今回のコロナショックによる経済停止の影響を大きく受けることになりました。
ハイテクセクターと対極ですね。
他の高配当 ETF に比べて、SPYD には景気に敏感なリートや金融銘柄も多く入っています。
そういった点が足を引っ張っている部分が多分にあるでしょう。
最近はものすごい原油安になっていたので、エネルギーセクターも同様に足を引っ張る格好になりました。
(参考記事)
コロナショックで揺らいだ、「高配当株は暴落に強い」という神話
SPYD が抱えるリスク
ということで、現在の SPYD には様々なリスクがあるといえるでしょう。減配リスク
読者の皆様もご存知のように今(2020年5月)は世界的に景気後退局面の入り口である可能性が高いです。
これは景気敏感株を多く抱える SPYD は今後パフォーマンスが低迷する可能性も高いことを示唆します。
例えばエネルギー銘柄は減配ラッシュが始まった感がありますしね……(OXYなど)。
もっともSPYDの場合、減配して配当利回りが低くなった銘柄は、年に数回ある組み入れ銘柄入れ替えで機械的に弾き出されます。
ということで今後も無理やり配当利回りは維持されるのでしょうが、 しばらくはインカムゲイン的にもキャピタルゲイン的にも苦しい状況が続くかもしれません。
(2020年6月22日追記)
2020年6月の配当は-21%の減配となりました。
税金リスク
また、税金の問題も大きなリスクです。(これはSPYD独自のリスクというか、高配当米国株全般のリスクですが……。)
米国株の配当は、まず米国で10%課税された後、日本でも約2割課税されます。
もともと米国で企業の利益が課税され、残った利益を配当として配っていることを考慮すると、これは実質的に3重課税です。
しかも、その配当を再投資する時に、証券会社に手数料を支払う必要もあります。
(DMM株等手数料無料の証券会社を使えばここは回避できます)
SPYDのように、インカムゲインに重点がおかれたファンドは税金&手数料による非効率性が悩みの種です。
結局SPYDを買うのはアリなの?
さて最後に SPYD を買うのがアリかどうか考えていきたいと思います。ここまで、否定的な内容が多くなってしまったのですが、別に SPYD を買うのがナシだとは考えていません。
確かに、SPYD に限らず高配当 ETF は特に景気後退の入り口ではポートフォリオのメインにはし辛いなとは感じます。
とはいえ、これだけ株価が低迷した状態で拾えば、いずれ来るであろう景気回復局面ではキャピタルゲインとインカムゲイン両方を期待することが出来ます。
さらに、 SPYD に投資することで間接的に海外 REIT にも投資することができますし、高配当 ETF に投資したいけど株だけにお金を突っ込むのは不安という人には選択肢としてアリだと思います。
以上を考えると今後数カ月から1年くらい待ち、その時の経済状況を見て改めて投資を前向きに検討するというのが良いでしょう。
今すぐ買うべきだという緊急性は感じませんが、数年・数十年といったスパンで投資プランを立てている投資家にとっては目を向けておいても良いETFだと思います。
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