どうもこんにちは。きむ公です。
それにしても投資の世界とは不思議なものです。
本来矛盾するはずの2つの主張がどちらも支持を得ています。
ある人は
PERが高い株を買うべし
PERが低い株を狙うのがいい
もっともこの例だと、どっちが正解でどっちが間違い、という風に言い切ることはできません。
その人の投資目的やマクロな経済状況、そして何より個別の銘柄の良し悪しを検討しないと何とも言えないのです。
とは言っても、これから投資を始める初心者にしてみればこれは混乱の原因になってしまいます。
特に、「トレンドに乗るべきか、逆張りすべきか」という問題は重要です。
ある人は
株は勢いのあるものを買った方が良い。なぜならそういう株はこれからも成長する見込みが大きいからだ。
株は下落しているものを狙うべきである。既に割安になっている株はこれ以上下落する危険が少ない
そこで今回の記事では、過去のデータでシミュレーションを行ってみました。
実験によって順張り戦略と逆張り戦略、どちらが勝つのか検証してみます。
詳しいルールは後で述べますが、米国株(現在のダウ銘柄の内、ダウ社を除く29銘柄)を対象として
①ドルコスト平均法で機械的に投資した場合
②直近のリターンが高かった銘柄だけを厳選して投資した場合
③直近のリターンが低かった銘柄だけを厳選して投資した場合
の3パターンのうちどれが最もトータルの投資成績が良かったかをシミュレーションします。 ②直近のリターンが高かった銘柄だけを厳選して投資した場合
③直近のリターンが低かった銘柄だけを厳選して投資した場合
(ちなみにドルコスト平均法が何かよくわからないという方は下の記事をご参照ください)
目次
順張り(トレンド)戦略とは何か
シミュレーションを行う前に、まず順張り戦略とは何かをはっきりさせておきます。細かいところは意見が分かれるところでもあるのですが、ここでは簡単にまとめとおきます。
順張り戦略とは、リターンを上げている銘柄に投資することです。
株式投資にはトレンドという言葉があります。
これはいわばその株の「勢い」のようなものを表す概念です。
上がっている株は勢いがある、つまり「上昇トレンドに乗っている」のだから今後もしばらくは上がるだろう というわけですね。
逆張り投資とは何か
次に逆張り戦略についてみていきましょう。これも簡単にまとめておきます。
逆張りとは株価が低迷する銘柄に投資することです。
株は時々、本来の価値を大きく下回る水準まで売り込まれることがあります。
マーケット全体が暴落している時などは、優良株でも下げてしまいます。
多くの人は銘柄の本当の価値を頭では分かっていても、暴落の恐怖には勝てないものなのです。
これまでの株価暴落局面では、優良銘柄が信じられない価格で投げ売りされる局面が何度も出現してきました。
逆張り投資家は、勇敢にもそういう銘柄を拾っていくのです。
この逆張り戦略には、
すでに下がっている銘柄なのだから、これ以上株価が下がる余地はあまりないだろう
シミュレーションのルール説明
では、今回のシミュレーションのルールを説明していきます。例えるならこれは、 毎月給料から投資費用を捻出しているサラリーマンのシミュレーションです。
彼は、一ヶ月ごとに一定金額の米国株つみたて投資を行います。
投資期間中は、ひたすらつみたてるだけです。
彼はシミュレーション期間中、決して銘柄を売りません(これはシミュレーションを単純化するためです)。
さらに、彼はダウ平均構成銘柄のみを対象に投資を行います(これも単純化が目的です)。
しかも、彼と全く同じ投資をしている投資家があと二人います。
3人共米国株を対象に、毎月同額を積立投資しているのです。
違う点はひとつだけ。
一人は順張り投資家、 もう一人は逆張り投資家、 そして最後の一人は何も考えずに全ての銘柄に均等額を投資している という点です(最後の一人がやっているのはドルコスト平均法ですね)。
ルールを詳しく書くと、以下のようになります。
シミュレーションのルール(詳細)
- 対象銘柄はダウ平均構成銘柄の内、ダウ社を除く29銘柄(ダウ社だけなぜかデータが手に入らなかったので除外)
- シミュレーション期間は、2009年1月1日から2019年11月29日まで
- 投資家達は、23営業日毎に一定額の投資資金を得る(毎月の給料をもらって、そこから投資していくイメージです)
- 投資家達は、23営業日毎に必ず投資資金全額を投資する(「今月は何も買わなくていいや〜」というのは認めません)
- 投資家A(順張り投資家)は、直近23営業日で株価が上がった株ベスト5銘柄に投資する(5種類の株はそれぞれ同額買います)
- 投資家B(逆張り投資家)は、直近23営業日で株価が下がった株ワースト5銘柄に投資する(5種類の株はそれぞれ同額買います)
- 投資家Cは29銘柄全てに投資します(29銘柄全て等しい金額分買い付けます)
- 配当は無視する
それとも何も考えず全銘柄を購入した投資家が勝つのでしょうか。
ズバリ、結果は次のようになりました。
勝ったのは順張り投資家
結論から言うと、トータルで最も高い利益(キャピタルゲイン)を得たのは順張り投資家です。次点で逆張り投資家のリターンが高く、最下位は均等買い付けの投資家となりました。
最終的な資産総額比率は下の表の通りです。
資産比率 | |
順張り投資家 | 1.109 |
逆張り投資家 | 1.021 |
均等買い付け投資家 | 1.000 |
三人の投資家の資産額推移をグラフにまとめると、こうなります。 逆張り投資家と均等購入の投資家では、微妙に逆張り投資家が上回っています。
しかし、この二人にはほとんど差はありません。
ということで結果は
1位:順張り投資家
2位:逆張り投資家
3位:均等買い付けの投資家
となりました。
ちなみに、順張り投資家と逆張り投資家のそれぞれが購入した回数が多かったランキングは以下の通りです。
順張り投資家の購入回数 | 銘柄名 |
1位 | AAPL |
2位 | CAT |
3位 | UNH |
4位 | BA |
5位 | GS |
逆張り投資家の購入回数 | 銘柄名 |
1位 | GS |
2位 | WBA |
3位 | CAT |
4位 | VZ |
5位 | CSCO |
考察〜順張り投資家は伸びる銘柄を拾えている〜
なぜ順張り投資家は最も良いパフォーマンスを出せたのでしょうか。その理由は、端的に言って 伸びる銘柄に重点的に投資できたからです。
順張り投資家が一番多く投資したのはアップル社です。
アップルは、全銘柄のなかでもダントツ1位の株価の伸びを見せています(なんと株価は25倍にもなっています)。
さらに順張り投資家がたくさん購入したキャタピラーとゴールドマン・サックスはそれほど成長しませんでしたが、 ボーイングとユナイテッドヘルスの10倍以上に成長した銘柄です。
一方、逆張り投資家が多く購入した銘柄は、どれも計測期間中にせいぜい5倍程度に成長したものばかりです。
ドカンと伸びる銘柄に集中投資できなかったのが敗因といえるでしょう。
成長性の大きい銘柄に投資する という順張り投資家の戦略がハマった形になりました。
ちなみに、ダウ銘柄の株価ってこんなに上がってるの!?と 驚いた方はこちらの記事を参照してください。
結果の解釈に関する注意点
今回のシミュレーションの結果の解釈には注意点もあります。それは配当を無視していることと、相場環境が偏っていたことです。
順に説明します。
配当を無視している影響は大きい
まず、配当収入を無視したことで、順張り投資家に不当に有利なシミュレーションになった可能性が高いです。というのも、成長性が高い銘柄ほど配当が低い場合が多いからです。
逆に、逆張り投資家が好むような銘柄は高配当が多く、配当分を再投資していた場合はおそらく両者の差は縮まるでしょう。
上昇相場
今回のシミュレーション期間は、リーマンショックからの回復期でした。長期的に見て右肩上がりの相場だったといえるでしょう。
このような相場では、逆張り戦略の強み(下落相場に強い)はそもそも活かせなかったのかもしれません。
まとめ
最後に今回の結果を簡単にまとめておきましょう。まとめ
- ダウ銘柄投資で逆張り投資家と、順張り投資家を勝負させると順張り投資家が勝つ
- 逆張り投資家も、何も考えずに全銘柄購入した投資家にはわずかに勝った
- 順張り投資家の勝因は、伸びる銘柄への集中投資ができていたこと
ちなみに僕は、投資シミュレーションにPythonというプログラミング言語(文法は単純なので、すぐ使えるようになります)のPandasというモジュールをつかっています。
これは金融データ解析のために作り出されたものです。
これを使えば、エクセルでは不可能なレベルのデータ解析が簡単にできる非常に便利なものです。
興味がある人は、『Pythonによるデータ分析入門』を読んでみてください。
Youtube動画から来ました。大変興味深く拝見(拝読)致しました。
10年の長期に亘り、これほど異なる投資スタンスをとったのにも関わらず、リターンの差は僅かだな、と云うのが第一印象です。
日本株で類似のシミュレーションを見てみたいです。
今後日本株版もやっていきたいです(^^)