【騙されるな】ボロ戸建て物件の投資はほぼ意味無いよという話

不動産投資の初心者に人気なのが、ボロ戸建ての高利回り物件にキャッシュで投資するという方法です。
この方法は、少額で始められる上、銀行に借金をする必要がないことから心理的ハードルが低いのが特徴です。

実際に最近不動産投資を始めたという方をネットでちょくちょく見ます。
数百万円の物件をキャッシュで購入し、家賃収入を毎月の生活費の足しにしているとのこと。

インカムゲイン好きには非常に魅力的に見えてしまうこの方法ですが、本当に良い投資方法なのでしょうか。
結論から言うと僕は、良い投資法だとは思いません。

今回の記事ではその理由を書いていきます。
補足
なお、
「ボロ戸建てキャッシュ投資が他の投資手法(ここでは株式投資)に比べてコスパが悪いよね」
という話なので、株をやっていない方には少しわかりにくいかもしれませんがご容赦ください。
あと、最初にボロ戸建て投資のメリットデメリットという基本事項 を簡単に振り返るのですが
「んなこと知っとるわw」
という方は 物件事例というところから読んでください。

ボロ戸建て物件への投資がブーム?

僕が最近ネットで見たのは、元々ネット事業をして稼いでいたという方です。

事業環境の変化によって本業で稼ぎにくくなって困っていたところ、不動産投資という新たな事業を見つけたということでした。

最近ネットで不動産投資がちょっとした盛り上がりを見せているようです。

僕自身 YouTube でも株式投資の動画を発信していますが、他の投資系のYouTuber さんを見ているとボロ戸建ての不動産投資をすすめの方が多くなってきたなという印象があります。

元手がない状態では、多少リスクを背負ってでも大きな利回りを狙わないと目に見える効果は期待できません。
そこでボロ戸建て投資ということなのでしょう。

ボロ戸建て投資のメリット

まず初めにボロ戸建て投資のメリットを見てきましょう。

少額で始められる

なんといっても少額で始められることは大きなメリットです。
地方のボロ戸建てであれば、500万円以下で購入できるものもゴロゴロしています。

これくらいであれば、まあ借金しなくても買えるよという人もかなり多いことでしょう。

利回りが高い

物件価格が安いことは、利回りが高いことを意味します。

地方の築40年以上の木造の物件であれば、表面利回り15%を超えるものも決して珍しくありません。
(あくまでも表面利回りの話ですが)

ボロ戸建て投資のデメリット

次にボロ戸建て投資のデメリットを見ていきましょう。

銀行融資が受けにくい

まずは銀行融資が受けにくいことがデメリットです。
ボロ戸建ての場合、建物自体に資産価値がほとんどありません。

これは借金の担保になる価値がないということと同義です。
ということで融資を引くのが難しいことがまず大きなデメリットとして挙げられます。

減価償却が取れない

もう一つ節税効果が薄いこともボロ戸建て投資の大きなデメリットです。

木造物件であれば耐用年数は22年ですが、一般的なボロ戸建はほとんどが築40年以上の物件です。

書類上物件に価値がないので、計上できる減価償却費用はわずかなものです。

本業の収入が多い人が、減価償却を利用して節税できるというのが、不動産投資の大きな特徴です。
これがほとんど使えないというのがボロ戸建て投資のデメリットだと言えます。

出口が見つけ辛い

売却がしづらい(出口が見つけづらい)こともデメリットです。

どんな市場でもそうですが、やはりいいものから売れていきます。
ボロ戸建てを買ったはいいものの、最終的にその物件を引き受けてくれる人がいなければ 大問題です。

仮にインカムゲインだけで、購入費用を回収できたとしても同様です。
その後、入居者が出ていけば、ただただ固定資産税と物件の維持費を払うだけになってしまいます。

最終的に自分で物件を解体しなければならないとなれば、さらに費用がかかります。

入居者トラブルの可能性

ボロ戸建は家賃が安いぶん、入居してくる方の属性も良くないことが多々あります。
  • 思わぬクレーム
  • 夜逃げ
  • 事故物件になってしまう
などの様々な非常事態が想定されます。

修繕の費用や手間

何より忘れてはいけないのが、ボロ物件はそれなりに修繕・改装をする手間がかかってしまうということです。

自分でDIYでなんとかするにしても、費用はゼロにはなりませんし何より結構な労働です。

物件事例

以上のメリットとデメリットを抑えた上で、実際のボロ物件投資のケーススタディを見てみましょう。

例えば次のような物件を購入するとします。
これは不動産サイトの楽待に掲載されていた物件を元に僕が作り出した架空の物件です。

2020年7月現在の不動産相場から見てもリアルな物件だと思います。
物件例
販売価格 300万円
表面利回り 15.00%
JR和歌山線 マイナー駅 徒歩6分
建物構造 木造
築年月 1979年01月 (築42年)
土地権利 所有権
土地面積 384.40㎡ 公簿
オーナーチェンジ
ボロ物件投資家が好みそうな物件ですね。

この物件は購入するに値するでしょうか。
なお、今回は銀行からの融資に全く頼らずに100%現金で購入するとします。

株式投資家の僕から見ると、この条件ではほとんど買うメリットが見出せません。

この物件を株で例えるとどうなる?

この物件を株に例えて考えてみましょう。
この物件に相当する株は、だいたいこんな感じです。
・PER 7.93倍以上
・配当性向100%
・会社が成長する可能性がゼロ
はっき言って、これはクソ株に分類されると思います。

なぜこのような見立てになるのかを説明します。

まずこの物件の株価(購入にかかる費用)を見ていきましょう。
不動産会社への手数料や登記費用、登録免許税などを物件価格の7%として計算します。

するとこの物件の「株価」は

300万円 × 1.07 = 321万円

ですね。

次にこの物件が1年間に生み出す純利益(税引き前)を計算しましょう。

表面利回りは15%ですが、今後、家賃交渉や退去リスクを考えて純利益の期待値を1割引で見積もります(希望的観測かもしれません)。
こうするとこの物件の1年あたりの「純利益」は

300万円 × 0.15 × 0.9 = 40.5万円

ですね。

株の割安度を計る PER(株価純利益率)は 株価(時価総額)÷ 純利益で計算します。

ということは、この物件のPERは

321万円 ÷ 40.5万円 = 7.93

と出ます。

実際の PER は税引き後の利益で計算するので、この数字よりも大きくなります。 (しかも実際には固定資産税が発生するので、利益が圧迫されてさらにてPERが大きくなります)

不動産の場合は稼いだ純利益は、修繕が発生しない場合は全て大家の手元に入ります。
これは株式でいう配当と同じですね。
稼いだ利益がすべて配当になっているので配当性向が100%です。

なお不動産の場合、株式と違って経年によって物件の本質的な価値が向上することはありません。

物件はただ老朽化して行くのみです。
相場全体の価格が上がっていくことはあっても、個別物件の本質的な収益力が向上していくことが近年の日本ではありません。

インフレで家賃が上がっていくことが見込める場合は、また話は変わってきますが、最近の日本ではそういうことはほとんどないでしょう。

株よりもデメリットが大きい

こうして見ると、この物件を買う意味があまりないことが感じ取れると思います。

なぜなら、本質的な価値が全く向上しない企業の株(この物件のこと)にPER 8倍程度の価格を払うくらいなら、その辺の商社株でも買った方がマシだからです。

日本の商社は10倍以下のPERが常態化していますが、それでも企業価値向上の希望が残されています。

要するに、
借金というレバレッジを効かせずにこんな物件を購入する場合と、
割安株を買ってほったらかしにしておく場合
で本質的な資産の収益性は変わらないということです。

それに加えて株であれば、
・資産価値自体の本質的な向上の可能性がある
・流動性が圧倒的に高く(出口がほぼ必ずある)
・購入や維持の手間暇がゼロ
という大きすぎるメリットがあります。

もちろん株(企業への投資)の場合であれば、稼いだ利益を全額配当として払い戻すわけではない(配当性向が100%ではない)のでぱっと見たのインカムゲイン(配当利回り)が低くなります。

ただ、それも嫌だという人は、適宜株式の一部を売却するという方法も取れます(元本が減るのであまりオススメしませんが)。

株式の方が、短期的な価格の上下は激しいですが、長い目で見てボロ戸建て投資よりも割安株投資の方がまだ優位性があると思います。

それでもボロ戸建て投資をやるべき人の例

ここまで色々と辛辣なことを書きましたが、ボロ戸建て投資を全否定したいわけではありません。

あくまでも投資の効率性だけを見るなら、僕には非効率に見えるというだけです。
実際に次のようなメリットを求めるならボロ戸建て投資もありだと思います。

投資効率よりも不動産経営の経験値重視

今後本格的な不動産投資と経営をやっていきたいという人が、その最初のステップとしてボロ戸建て投資するのはアリだと思います。

収益よりも不動産の経験を積むことが目的ということですね。

数億円の物件で失敗するよりも、数百万円の物件でノウハウを学んでいく……。

という発想は別に間違ってないと思います。

超高利回り物件を見つけた

何らかのコネがある方は、今の相場をはるかに上回る高利回りのボロ物件を見つけることも可能でしょう。

そういう場合はもちろん投資はアリだと思います。

同様に、株式相場に比べて不動産相場が不自然に下がりまくった場合も投資チャンスだと言えるでしょう。

ただ、こういうケースってなかなか見ないですけどね(逆は結構ありますが)。

DIY技術が高い&楽しめる

最後に DIY が好きだったり、自分で非常に安くリフォームを行えるなどといった人もボロ戸建て投資向きですね。

僕はDIYに関しては素人もいいところなので割愛しますが、プロ顔負けの DIY 技術を持っている大家さんもたくさん活躍しています。

まとめ

最後にまとめを。

今回の記事で言いたかったのは、 ボロ戸建て投資そのものがだめなのではなく、株式投資と比較して本質的に不利な場合がかなり多い ということです。

もちろんこれは、ボロ戸建て投資よりも割安株投資の方が絶対に儲かるということではありません。

ただ
投資初心者に、 毎月数万円のインカムゲインのためにボロ戸建ての購入をやたらと勧めまくる
と言う業者もいるみたいなので注意喚起として書いたまでです。

300万円で家を買うなら、
①その300万円を銀行に貯金しておいて定期的に引き出す
②300万円分の株を買って、配当と株価の値上がり益を狙う
のいずれの場合よりも期待値が高いかどうかをよくよく考えた方がいんじゃね?という話でした。

だいたい言いたいことは以上です。
スポンサーリンク

SNSシェアお願いします!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA